私のリード遍歴と、いまの併用に落ち着いた経緯

大学時代——Vandoren JAVA で「ジャズらしさ」に憧れた頃

大学のジャズサークルでバリトンを始めた当初、私はとにかく「ジャズらしい音」が欲しかった。先輩たちが使っていた Vandoren JAVA 2.5 を真似て買った。明るくて倍音が豊か、ビッグバンドの分厚いサウンドの中でも抜けてくる感覚は確かにあった。

ただ当時の私は、リードを「育てる」なんていう発想がなかった。新品を開けて、当たりが悪ければ捨て、次を使う。社会人になるまでその繰り返しだった。

BB を本格化してから——Rico Jazz Select の「育てる前提」が回らなくなった

社会人になって、スタジオを借りる時間が週 1〜2 コマになった。そのタイミングで Rico Jazz Select に乗り換えていた。吹き心地は良かったが、本来「数回吹き込んで育てる」前提のリードで、それができなくなった。同じ箱の中で当たりが少なく、何枚か捨てるとその月のリード代が痛い。

次に D'Addario Select Jazz 2M を試した。品質のばらつきは確かに少ない。ただ、当時私が使っていたマウスピースとの相性が今一つで、「このリードで最高の音が出た」と感じる瞬間が来ないまま数ヶ月が経過した。

現在——Lavoz Medium Soft をメイン、Forestone Bamboo Medium を「休憩明け1本目」に

私が3年ほど前にマウスピースを Berg Larsen ラバー 115 に切り替えたとき、リードの組み合わせも一度総点検しました。Vandoren JAVA、Rico Jazz Select、D'Addario Select Jazz——一通り回した結論は、「ブランドより、社会人として"育てる時間が無い"という制約をどう吸収するか」が決定的だということでした。

行き着いたのは2つを併用する形です。

  • Lavoz Medium Soft(ケーン/通常リード):当日のメイン。タックのエッジ、抜け、芯はやはりケーンが上で、これを譲るつもりはない。
  • Forestone Bamboo Medium(人工リード):BB の長時間休憩後の「1本目」専用。これが私の運用の核。

ケーンのリードは抜けとタックのエッジが優れている。ここは譲りたくない。ただ、社会人になってリードを育てる時間が取れなくなった。BB の本番では曲と曲の間に長い休憩が入ることもあり、そこから戻った1本目が安定しない。この2点を解決するために、人工リードを「サブ」ではなく「休憩明け1本目専用の主役」として運用に組み込んだ——これが Lavoz × Forestone 併用の出発点です。

なぜ「人工リードは緊急用」ではないのか——私の機能配置

ケーンリードの長所と短所

葦のリードは抜けとタックのエッジが断然強い。BB でバリサクが押し出す「土台の厚み」も、やはりケーンの方が出る。私はこれを手放す気はない。

ただし弱点がある。一度乾いてしまうと、湿らせ直しても最初の数フレーズで音程と抜けが安定しない。BB の合奏中、1曲ごとに長い休みがあって、次に吹くとき「1本目が鳴らない」問題がこれだ。

人工リードを「サブ」ではなく「BB 休憩明けの主役」に置く運用

「人工リードはサブ」「メインは葦」というのが標準的な書き方です。私の運用ではそうではありません。Forestone は「緊急用の控え」ではなく「BB の長時間休憩後、最初に楽器を構える瞬間専用の主役」として配置しています。

普通のリードは、休憩で乾いて、湿らせ直しても1曲目の音程と抜けが安定しない——この問題を解決する用途に対して、Forestone は完璧でした。2本目以降はケーンに戻す。この使い分けが私の基本運用です。

私が試した人工リード——Forestone Bamboo に至るまで

現在ネット上で「バリトンの人工リード」というと Légère が真っ先に挙がります。私が Forestone Bamboo を選んだのはカットの抜け感が違うからです。Légère も試しました(半年使った)。安定はします。ただ、抜けの瞬間に微かな硬さを感じる——これが BB のシャウト系ソリで気になりました。

Bamboo は天然素材を粉砕した複合人工リードで、葦に近い抜けが残ります。完全に葦と同じではありませんが、「休憩明け1本目」という用途に限れば、Légère より Forestone Bamboo の方が私には合っていました。

なぜ Lavoz Medium Soft なのか——硬さを「身体」で考える

「バリトンはやや柔らかめが正解」の通説を、身体の視点で見直す

バリサクのリード選びで「やや柔らかめが正解」と言われる理由は、管が長い分だけ息の抵抗が大きくなるから、というのが通説です。これは間違いではありませんが、身体の使い方が整っていれば、Medium Soft で十分に芯が立ちます。

私はアンブシュアの「支え」が整ってから Medium Soft に落ち着いた。支えが曖昧な状態で柔らかいリードを吹くと、芯ではなくエアだけが増えていく。身体3階層(アンブシュア → 体幹・姿勢 → 呼吸)の1層目が整っていることが、リード硬さ選択の前提条件です(アンブシュアの判断軸についての記事もあわせてご覧ください)。

マウスピースとの位置関係でリードの「硬さ感」は変わる

同じ Lavoz Medium Soft を使っていても、マウスピースへのリードのセット位置で音は変わります。マウスピースの先端に対して、リードをセンターより少し前に出したり、逆に少し奥に引いたりすると、それだけで吹奏感が変わる。バンドによって設定を微調整することもある——これは私が現場で実感していることです。

少しリードを出す(センターより前に出す)と開きが広がる感覚になり、芯が増す。少し引く(奥に入れる)と抵抗が減って鳴らしやすくなる。0.5mm の微調整が音を変える。Berg Larsen ラバー 115 との組み合わせでは、私はやや前目に出す設定で落ち着いています。

バンドによって硬さを変えるか

私は基本的に Lavoz Medium Soft 1ランクで固定していますが、状況によっては Forestone Bamboo Medium の「硬さ感」を基準に戻すことで調整しています。厳密に「バンドによって Lavoz の番手を変える」ところまではやっていません。

リードに投資しない、という判断軸

私が機材投資の優先度を決めるとき

機材にお金を使う優先順位について、私の中では明確な順序があります。楽器本体やマウスピースは「これだ」と思うものに出会ったら迷わず買う。ところがリードとリガチャーは、それと比べるとどうしても投資の感覚が薄い。逆に言えば、お金で解決できないからこそ、運用面で工夫する余地が大きい。投資はしないが、使い方は考える。それが Lavoz × Forestone 併用という形に落ちています。

それでも運用面では工夫する——「投資は低優先度、運用は工夫」の整理

高いリードを1枚使い続けるより、安価なリードを複数ローテーションする方が結果的に音が安定することは多い。私のリードに対するスタンスは「枚数でカバーする」よりも「用途で使い分ける」になっています。Lavoz はメインとして1軍で使い続け、Forestone は「BB 休憩明け1本目」という特定の用途に固定する。役割が明確なので、どちらも出番が明確です。

高級リガチャーに踏み切れない人へ——付属品で十分な理由

リガチャーについても同様です。私は付属のリガチャーで今も不満がありません。マウスピースとリードの組み合わせで音の大半は決まる。リガチャーを変えて「激変した」と感じたことは今のところ一度もない。

ブランド早見表(参考)

以下は「このブランドはこういう傾向がある」という参考情報です。私の現役セッティングと、試して見送ったものを明示しています。

ブランド傾向私の評価
Vandoren Traditional / JAVAバランス良く入門向け。JAVA は倍音豊か試した / 現在は未使用
D'Addario Select Jazz品質ばらつき少なく安定志向試した / Berg Larsen との相性で見送り
Rico(La Voz)Medium Softジャズに根強い人気、抜けとエッジ感現役メイン
Forestone Bamboo Medium複合人工、葦に近い抜け感現役・BB休憩明け用
Légère Signature安定性最高の純人工リード試した(半年)/ 抜け感で Forestone に変更

※ 評価は Berg Larsen ラバー 115 との組み合わせでの私個人の体験です。マウスピースが変われば評価も変わります。

マウスピース × リードの組み合わせ——私の実機材を含む早見表

マウスピースおすすめリード硬さ備考
Berg Larsen Rubber 115Lavoz Medium SoftMedium Soft私の現役メイン
Berg Larsen Rubber 115Forestone BambooMedium私の現役・休憩明け用
Vandoren V16 B7Vandoren JAVA2.5参考
Meyer 7MRico Jazz Select2M参考
Otto Link Tone Edge 7La VozMedium-Hard参考

まずは1箱ずつ——私が次に試すなら

全部買い直すのは大ごとです。私の経験では、Lavoz Medium Soft を1箱、Forestone Bamboo Medium を1枚、合計 5,500 円前後から運用転換が始まります。1ヶ月使って「BB 休憩明けの1本目」が変わるかどうか、ご自身の耳で判断してください。

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マウスピース選びの判断軸は「バリトンサックスのマウスピースを4本乗り換えて Berg Larsen ラバー115に辿り着いた理由」で詳しく書いています。リードより先にマウスピースが自分に合っているかを確認することをすすめます。アンブシュアの使い方との関係は「バリトンサックスのアンブシュア、緩めるか支えるか」へ。